NISA制度が2024年から新しくなり、使い勝手がかなり良くなるらしい…と評判を呼んでいます。
本記事では、どのような点が変わるのか?医師・歯科医師の皆様にとって、新しいNISAをどのように活用するのがおすすめなのか解説します。
NISAとは?
現行のNISA制度の最大のメリットは、NISA口座を介せず、株式や投資信託などの売買を行った場合に、売却益や配当金にかかる約20%の税金をゼロにすることができるという点です。
よく比較検討される確定拠出年金(iDeCo)のように、掛け金が全額所得控除になるといった大きな節税効果はありませんが、確定拠出年金のように60歳まで引き出せないといった制限もなく、はじめて投資にチャレンジする人にとって使い勝手の良い制度といえます。
そんなNISA制度の改正が『令和5年度税制改正大綱』に盛り込まれ、2023年いっぱいで現行のNISA制度が終了し、2024年からよりメリットが大きくなった新しいNISAがスタートする予定です。
現行のNISA制度と新しいNISA制度にはどのような違いがあるのか見ていきましょう。
新しいNISAの変更点とは?
現行のNISA制度には、年間120万円を上限に、最長5年間、個別株等への投資が可能な『一般NISA』と、年間40万円を上限に、金融庁が厳選した投資信託やETFの積み立て運用を最長20年間行える『つみたてNISA』の2種類があり、2つの制度のどちらかを選んで年間投資限度額の範囲内で投資を行います。
そんな現行のNISA制度からの変更点は、主に下記の4点です
・NISA制度の恒久化
・投資枠の拡大
・非課税枠の再利用が可能になる
・一般NISAとつみたてNISAが一本化される
1つずつ詳しく解説しましょう。
NISA制度の恒久化されることによる変化とは?
現在の一般NISAの場合、非課税期間は5年という縛りがあり、期限が到来するまでに売却して現金化する、もしくはロールオーバーの手続きをする必要がありました。
つみたてNISAの場合は、非課税期間は20年と長いものの、ロールオーバーができなかったため、20年以内の適切な時期に売却する必要がありました。
それが、成長投資枠・つみたて投資枠ともに非課税保有期間が無期限となったことで、ロールオーバーするかどうかなどと悩む必要がなくなり、より長期的な視点で投資・運用を行うことが可能になるでしょう。
投資枠の拡大による変化とは?
新しいNISAでは、現行の一般NISAの後継となる『成長投資枠』は、現在の一般NISAの年間投資上限額120万円の2倍の240万円に、つみたてNISAの後継となる『つみたて投資枠』は現在のつみたてNISAの年間投資上限額3倍の120万円へと、年間投資上限額の大幅拡大される見込みです。
この改正に伴って毎月積み立てられる上限額が3倍になるだけでなく、成長投資枠で購入できる銘柄も増えます。
例えば、東証プライム市場の銘柄には、単元株価格が年間投資可能額の120万円を超えている銘柄が26あり(2023年2月27日時点)、その中で新しいNISAの成長投資枠の上限額以下で新たに購入できるようになる銘柄の中には、ダイキン工業やオリエンタルランド、富士通、東映、ニトリホールディングス、コーセーなど人気の株式も複数含まれています。2023年2月27日現在、単元株価格が240万円超の銘柄は、キーエンスやファーストリテイリングなど5社のみのため、日本国内の優良企業の株式のほとんどを、NISA制度を利用して購入できるようになるわけです。
新たに購入できるようになる個別株の中に、応援したい企業や成長が期待できると考える企業がある方は、成長投資枠を利用して投資を検討してみるとよいでしょう。
非課税枠の再利用が可能になることによる変化とは?
現行の一般NISAでは、一度買い付けを行うと、その分投資可能額が減り、買い付けた株式等を売却しても、枠が復活することはありませんでした。
しかし、新しいNISAにおいて、買付金額の合計が1,800万円まで(成長投資枠は1,200万円まで)の『生涯非課税限度額』が設けられ、例えば年間200万円ずつ個別株を購入し、6年で成長投資枠の上限である1,200万円に達したとしても、6年間のうちにその一部を売却していれば、その分の枠が復活し、新規買い付けが可能になります。
枠が復活するようになるからといって、お忙しい医師・歯科医師の皆様デートレードのように頻繁に売買する投資手法はお勧めできませんが、枠が消失しない分、売却のハードルが下がる点は大きなメリットと考えられます。
なお、現行のNISA制度を利用されている方の場合、現在利用中の枠は、2024年からスタートする『生涯非課税限度額』とは別枠とみなされ、新しい制度に移行することはできません。つまり、2023年までに購入した株式や投資信託は、一般NISAなら5年、つみたてNISAなら20年の保有期間中は新しいNISAとは別で運用し、期間中に売却すれば運用益等に税金がかからずにすむということです。
今NISAをやっているから生涯非課税限度額の一部が消費されてしまうわけではないため、安心して2023年中も現行のNISAの運用を続けてください。
一般NISAとつみたてNISAが一本化されることによる変化とは?
現行のNISA制度では、一般NISAとつみたてNISAを併用することができず、どちらかを選ぶ必要がありましたが、新しいNISAでは、それぞれの後継となる成長投資枠とつみたて投資枠を併用することができるようになります。
つみたて投資枠では現行のつみたてNISA同様に、投資対象は金融庁が厳選した長期積み立て投資に適した投資信託等に限定されていますが、逆に一般NISAの後継である成長投資枠の中で、つみたて投資枠で購入でききるものと同じ投資信託を購入することは可能です。つまり、買付金額の合計が1,800万円に達するまでであれば、年間360万円分の投資信託を購入することもできるというわけです。
個別株に投資するほどのリスクは取りたくないけれど、より多くの投資信託を購入したいとお考えの方は、成長投資枠も使って投資信託を購入するという選択肢を検討してみるのもおすすめです。
医師・歯科医師は新しいNISAをどのように活用するのがいいのか?
最後に医師・歯科医師の皆様が新しいNISAをどのように活用するのがいいのか解説します。
『じっくり長期投資』『コツコツ積み立て投資』『バランス分散投資』のスタンスはそのままに!
非課税枠の再利用が可能になるとはいえ、忙しい医師・歯科医師の皆様には、頻繁に売り買いするような投資は向いていません。
最大限に複利の効果を得て、効率的に資産を運用するため、そして、忙しい中でも、着実に資産形成を行っていくためには、以前お伝えした『じっくり長期投資』『コツコツ積み立て投資』『バランス分散投資』の3つのスタンスを新しいNISAでも変えないようにすることが大切です。
ドルコスト平均法を用いて、多少の価格変動に一喜一憂することなく、長期的な投資を心がけましょう。
出口戦略を立てた上で運用を始めよう
NISA制度が恒久化され、決まった期限がなくなるということは、解約しなければいけない時期やロールオーバーすべきか検討しなければいけない時期が到来しないため、より自分で出口を設定しておく必要性が増すということです。
例えば、「70歳ではリタイアしたいので、65歳~70歳の間で運用益が〇%以上出ていたら半分売却して利益を確定させよう」「リタイア時点で暴落が起こっていたら、退職金などを当面の生活費に充てて、5年間は解約時期を延ばせるようにしておこう」などとNISA制度だけではなく、預貯金や保険、共済制度などと組み合わせて、大まかにでも出口をあらかじめ設定しておきましょう。
まとめ
新しいNISAがスタートすると、非課税枠が倍増する分、運用益や配当金に税金がかからなくなるというメリットが増大するだけではなく、制度の恒久化や非課税枠の再利用が可能になることで、より長期的かつ多様な投資が可能になるでしょう。
また、決められた期限がなくなる分、自身であらかじめ具体的なゴールを設定しておくことで、投資の成功確率は高まるはずです。
安全かつ効率的な資産運用を目指すのであれば、『じっくり長期投資』『コツコツ積み立て投資』『バランス分散投資』の3つのスタンスは変えずに、長期的な積立投資を心がけましょう。
株式会社フィナンシャルマネジメントではこれまで300人以上の医師・歯科医師(勤務医・開業医)のライフプランコンサルを行ってきた実績がございます。また無料相談も実施しておりますのでお気軽にご相談ください。