医療法人化をご検討中の方へ!その医療法人化は本当に有意義ですか?①
医療法人化の目的は何ですか?

医療法人化をご検討の先生(個人医院のみ)に「医療法人化の目的」を調査した際、9割以上の先生方の目的に「節税」と言う項目があり、選択できる項目中1番高いニーズと言う統計が御座います。

逆に、

医療法人化の数値基準やメリット・デメリットを理解していますか?

と言う質問に対しての回答では、
① しっかり理解している       ・・・  6.3%
② 理解している           ・・・  11.3%
③ 理解できていない         ・・・  81.9%
④ その他(税理士に任せている含む) ・・・  0.6%
と8割以上の先生方が医療法人化に対して十分な理解ができてないと言う統計も御座います。

ひと昔前と比べると「医療法人化での節税効果」は低くなっています。
但し、現在でも医療法人を上手に活用することで、節税を行いながら手残り(可処分所得)を増やすことは十分可能です。

有意義な医療法人化は法人設立前に決まる!押さえておきたい法人化のPOINTを解説!!

有意義な医療法人化は法人設立前の検討段階が勝負!!
1、数値基準をクリアする(医療法人化の数値的目安をクリアする)
2、医療法人化の目的をリストアップ、メリット・デメリットと照らし合わせる
3、ビジョン(仕事・プライベート・相続など)から考察をする
4、個人医院(法人設立前)と医療法人(設立後)の具体的数値から検討する

もしも、医療法人化を検討している、顧問税理士(会計士)さんに相談してもすっきりしないなどのお悩みがある先生は本記事を是非ご参考にしてください。

4つの数値基準から医療法人化を検討する

結論を申しますと一般的な「売上が8,000万円を超えたから」や「年収が2,000万円超えたから」「税率50%超えたから」といった曖昧な数値基準のみを判断材料とした医療法人化検討はお勧めしません。

何故なのか!?その答えは、
1、 医療法人化後は絶対にランニングコスト(社会保険料・顧問料など)が増える。
2、 医療法人に利益を残さないと法人化のメリットが半減してしまう。
場合によってはメリットが小さく、デメリットだけが増えてします可能性も御座いまのでご注意ください。
ではどのような数値基準を満たせば良いのか!?

医院に関する数値基準が3つ「医院(クリニック)の売上」「所得=所得税率」最後に「利益率」、この3つの内2つ以上の要件を満たしている場合、まずは医院に関する数値基準はクリア。
次にプライベートに関する数値基準で「貯金額と毎月の貯蓄額」「予測できる大きな支出と資金計画」です。これらは個人のライフプランシートを作成することで明確にすることが容易となります。

もしも、「医療法人化を検討している」や「顧問税理士(会計士)さんに相談してもすっきりしない」などのお悩みがある院長先生は本記事を是非ご参考にしてください。

① 医院(クリニック)の売上から検討する

後の2つにも影響し、且つ医院経営と個人収入(所得)の基となる医院の売上。
なぜ「○○○○万円を超えたから・・・」と言った数値基準が示されるようになったかご存じですか?

答えは・・・売上が7,000万円を超えると税制優遇が利用できなくなるからです。

社会保険診療収入が5,000万円を超えると場合、または社会保険診療収入が5,000万円以下でも自費(自由)診療も含めた収入が7,000万円以上ある場合は概算経費である租税特別措置法26条(税制優遇)が使えなくなります。
租税特別措置法26条は個人医院でしか利用できません。※ 医療法人は利用不可

つまり、この概算経費が使えなくなってしますタイミングが、医療法人化を検討する1つ目の数値基準となるのです。

ただし、医療法人成りを一度行うと個人医院に戻ることはできません。
当然、「売上が7,000万円を超えたら医療法人化!!」という訳ではなく、売上増減リスクを考慮して「8,000万円を超えたら」「1億円を超えたら」と言う数値基準が一般的となりました。

ですので、売上+α、今後の「売上予想」「事業展開」などを考慮した上で医療法人化を検討するべきと言えるでしょう。

② 所得金額や所得税率から検討する

個人医院の場合、1月から12月までの売上から必要経費と専従者控除・貸倒金などの引当金・準備金を差し引いた金額がその年の所得金額となります。
その所得金額から基礎控除、社会保険料控除など各種控除を差し引いた金額が課税所得金額となり、個人の所得税を計算する基となります。

課税所得額が1,800万円を超えると所得税率が40%、住民税10%、合計税率が50%となり、売り上げは順調に伸びているが、手取り(可処分所得)が思ったほど増えていないとギャップを感じる先生方も多いのではないでしょうか。

医療法人化検討の2つ目の数値基準はこの所得が1,800万円を超えるタイミング、所得税率が40%以上になるタイミングとなります。

個人医院で予期せぬ高額納税を行わない為に注意するべきPOINTは!?

・減価償却資産の減少に注意する

減価償却費は帳簿上の経費=実費を伴わない経費となり、可処分所得を増やすことに有効な手段となります。
減価償却資産は「構造・用途」「細目」によって耐用年数が決まっており、金額の大きい減価償却資産を償却済みとなる翌年は予期せぬ高額納税の可能が高くなるので注意が必要です。
減価償却資産の償却済みとなる年度や減少時期は予測可能です。
計画的な減価償却資産の増資や、納税計画を立てる為にシミュレーションを行いましょう。

・自費診療が1,000万円超えた年度の翌々年度は消費税が課税される

保険診療が中心の先生方は特に注意が必要です。
例えば2022年度に自費診療が1,000万円を超えた場合、翌々年度の2024年は消費税課税業者をなります。
2024年度は自費診療売上に応じて消費税が課税されますので注意が必要です。
※ 個人で不動産などの売却を1,000万円以上行った場合でも。翌々年度は消費税課税業者になりますのでご注意ください。

③医院の利益率から検討する

利益率が30%以下の個人医院では、医療法人化のメリットである節税・減税効果が受けにくい傾向にある医院が多いことが問題点です。
基準では利益率30%以上(理想は35%以上)が目安となります。

法人化では医療法人に内部留保を貯蓄する必要がございます。
医療法人化ではランニングコストの増加は必須となり、その上で内部留保を貯蓄すると言うことは「売上を上げる」か「経費を削減する」ことが必要となります。
利益率が30%以下の場合では、内部留保を貯蓄することが25%以上の場合と比べて難しくメリットを受けにくい傾向にあります。

これらを見極める為、法人設立前所得分散による減税効果の検証と、医療法人化によるランニングコストの増加予測と医療法人化による内部留保予測などのシミュレーションを作成し、数値上での検証をしっかりと行いましょう。

検証結果によってはメリットよりデメリットが大きく、医療法人化に意味がない、むしろマイナスというケースも御座いますので十分に注意してください。

以上より3つ目の数値基準は利益率が30%以上ある。この基準により医療法人化の恩恵をしっかりと受けることができる可能があります。

医院に関する数値基準の2つをクリアしていれば医療法人化検討OK

3つの数値基準中2つ以上をクリアしていれば、まずは医療法人化を検討する土俵があると言えます。
この土俵は非常に重要な土俵となり、医療法人化により短期・長期の節税ができる可能性があることを示しています。

医療法人化にご興味がある先生は確定申告書の所得税青色申告決算書をチェックしてみてはいかがでしょうか。

④「予測できる大きな支出と資金計画」と「貯金額と毎月の貯蓄額」(プライベート)

法人化では前述したように医療法人に内部留保を貯蓄していきます。

医療法人の法人税率は約28%で低税率ですので、意図的に役員報酬を抑え内部留保を貯蓄することで中長期的な「節税」と「個人の手取り(可処分所得)アップ」を図ります。

役員報酬を必要以上に高く設定すると、個人の所得税・住民税が高額になり医療法人化の意味が薄れてしまいます。
法人化設立後、数年は個人の手取り収入が法人設立前よりも低くなる場合もあることをご理解ください。
そして、医療法人での役員報酬は期毎に決め固定給が理事長(理事)に支給されます。
一度、決定した役員報酬は自由に変更することが出来ず1年間変更できません。

ここで注意するべきPOINTが「貯金額と毎月の貯蓄額」「予測できる大きな支出と資金計画」です。

プライベートの貯金が枯渇する事態や、毎月の収支が逆ザヤになってしまう生活、近い将来に計画していた新居購入やお子様の進学などに影響が出るのであれば医療法人化の先送りされることをお勧めします。

この問題はライフプランを作成することで事前把握が容易にできます。ライフプラン作成は、医療法人化メリットの1つ「低税率での退職金受け取り」でも重要な項目となりますので、医療法人化をご検討の際は同時にライフプラン作成も実施してください。
個人医院パターンと医療法人化したパターンのライフプランを比較いただければ、医療法人設立が最適解かどうか一目瞭然です。

まとめ

有意義な医療法人化は設立前のシミュレーションが非常に重要となります。
医療法人化の数値基準はメリット・デメリット以前に最低限クリアする目安です。また数値基準をクリアすることで自ずとメリットとデメリット対比も可能となります。
医院に関する数値基準は3つ。
「医院(クリニック)の売上」が7,000万円以上(高ければ高い方が良い)
「所得=所得税率」が1,800万円以上(所得税率40%以上)
「利益率」は30%以上(理想は35%以上)
この3つの内2つ以上の要件を満たしている場合、まずは医院に関する数値基準はクリア。
プライベートに関する数値考察が1つ。
個人医院パターンのライフプランと医療法人化パターンのライフプランを比較することで医療法人設立が最適解かどうか一目瞭然となることでしょう。
ライフプラン作成で中長期的な医療法人と個人の資金計画把握が可能となります。
株式会社フィナンシャルマネジメントではこれまで300人以上の医師・歯科医師(勤務医・開業医)のライフプランコンサルを行ってきた実績がございます。また無料相談も実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

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