令和5年度税制改正大綱でコインランドリーとマイニングを使った節税が封じられる!?

去年令和4年度の税制改正大綱で封じられた節税には『ドローン節税』や『足場節税』などがありましたが、今年も税制改正大綱によって封じられた節税策が2つあります。

どのような節税方法ができなくなってしまったのか、見ていきましょう。 

令和5年度税制改正大綱で封じられた2023年からできなくなる2つの節税とは?

令和5年度税制改正大綱によって封じられた節税は次の2つです。

・コインランドリー

・マイニング

令和5年度の税制改正大綱の該当箇所は以下の通りです

(2)中小企業投資促進税制について、次の見直しを行った上、その適用期限を2

年延長する(所得税についても同様とする。)。

① 対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外する。

② 対象資産について、総トン数 500 トン以上の船舶にあっては、環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定する。

(3)中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(中小企業経営強化税制)について、関係法令の改正を前提に特定経営力向上設備等の対象からコインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。

令和5年度税制改正の大綱 (令和4年12月23日閣議決定)

令和5年度税制改正大綱にも書かれている通り、いずれも、『中小企業投資促進税制』もしくは『中小企業経営強化税制』を利用して、短期的に大きな減価償却費を損金計上することが認められていました。それが、今回の税制改正大綱によって除外されたのです。

まず、『中小企業投資促進税制』『中小企業経営強化税制』とはどのような制度だったのかから確認していきましょう。 

『中小企業投資促進税制』『中小企業経営強化税制』とは?

『中小企業経営強化税制』『中小企業投資促進税制』という2つの制度は、非常によく似ていて、共通点も多くあります。利用するための条件、対象となる資産、申請方法、節税効果などの違いを見ていきましょう。 

『中小企業投資促進税制』『中小企業経営強化税制』を利用するための条件とは?

どちらの制度を利用するにも以下の2つの条件を満たす必要があります。

・青色申告を行っていること

・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合等)もしくは、従業員数1,000人以下の個人事業主であること

そして、いずれも、製造業、建設業、小売業、不動産業、飲食店業、情報通信業、損害保険代理業など幅広い業種での利用が想定されている制度で、対象外となる事業は映画業を除く娯楽業、性風俗関連特殊営業に該当する事業などと多くありません。

医業も対象事業に含まれているため、ソフトウェアの購入費用などで適用を受けたことのある開業医の方もいらっしゃるのではないでしょうか? 

『中小企業投資促進税制』『中小企業経営強化税制』の対象となる資産とは?

2つの制度の主な違いは即時償却や税額控除の対象となる資産と、対象となる資産の違いは以下の通りです。 

【中小企業投資促進税制】

・機械及び装置(1160万円以上)

・測定工具及び検査工具(1120万以上、130万円以上かつ複数合計120万円以上)

・一定のソフトウェア(1つのソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上)

・貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)

・内航船舶(取得価格の75%) 

【中小企業経営強化税制】

・機械装置(160万円以上)

・工具(30万円以上)

・器具備品(30万円以上)

・建物附属設備(60万円以上)

・ソフトウェア(70万円以上)

※生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)、デジタル化設備(C類型)、経営資源集約化設備(D類型)の4種類がある

 

『中小企業投資促進税制』『中小企業経営強化税制』の申請方法と節税効果の違いとは?

2つの制度の申請方法と節税効果は以下のように大きな違いがあります。

 【中小企業投資促進税制】

『中小企業投資促進税制』とは、青色申告書を提出する中小企業が、新品の機械装置などの対象設備を取得したり、製作したりした場合に、取得価額の30%の特別償却(普通償却限度額+基準取得価格の30%の特別償却限度額)もしくは7%の税額控除のどちらかが受けられるというものでした。(ただし、税額控除の対象は、個人事業主と資本金3,000万円以下法人のみ)

申請方法は簡単で、確定申告書に必要事項を記載し、税務署に申告するだけで適用を受けることができたため、広く利用されていました。

以前あった『生産性向上設備投資促進税制』と似たような仕組みの制度で、コインランドリーやマイニングなどに必要な機械装置の購入も対象で、通常よりも30%多く償却できることで短期的な節税効果が見込めました。さらに、税額控除の対象者に該当している場合は、税金の繰り延べではなく、根本的な節税が可能だったわけです。

そんな中小企業投資促進税制はもともと令和5年年331日までの期間限定のもので、令和5年度税制改正大綱で2年延長が盛り込まれていたのですが、先述のコインランドリー、マイニングは除外されたのです。 

【中小企業経営強化税制】

中小企業経営強化税制は中小企業投資促進税制と異なり、事前に中小企業等経営強化法の認定を事業年度の決算日までに認定を受け、その計画に基づいた投資をしなければいけません。

手間が増える分、全額即時償却が可能になり、税額控除を選択する場合は10%の税額控除が受けられるというメリットも大きいのが特徴です。

 次にコインランドリーとマイニングを活用した節税とは、そもそもどんな方法だったのか、今回の税制改正によってどう変わるのか見ていきましょう。 

コインランドリーを活用した節税スキームとは?

コインランドリー業は『中小企業投資促進税制』と『中小企業経営強化税制』両方の対象でした。

コインランドリーを活用した節税スキームは、コインランドリー事業にかかった初期費用を即時償却することで、大きな帳簿上の赤字を作り、本業の黒字と損益通算することで、大きく節税できるというものでした。

『中小企業経営強化税制』を利用すれば、購入した設備の全額を即時償却もしくは10%の税額控除が受けられ、『中小企業投資促進税制』を利用すれば、初期費用の約70%を即時償却もしくは7%の税額控除が受けられため、急激に売り上げが上がり、数千万円、数億円の利益が出た法人が節税目的で行うケースが目立っていました。

そんなコインランドリー業のうち、その管理のおおむね全部を他の者に委託するものは、2年の延長が決定した中小企業経営強化税制の対象外となりました。つまり、対象外となったのはコインランドリー事業の運用や管理全般を他者に委託して、副業的に節税目的の事業を行っている場合のみです。そのため、コインランドリー事業をメインの事業として行っている場合はその限りではありません。

対象外となった場合、即時償却や税額控除が受けられるのは令和53月までで、それ以降は、耐用年数にならして減価償却費を損金計上していくことになります。トータルで損金計上できる金額は変わりませんが、大きな帳簿上の赤字は作りにくくなると考えられます。 

マイニングを活用した節税スキームとは?

マイニング業も、『中小企業投資促進税制』と『中小企業経営強化税制』両方の対象で、その節税スキームもコインランドリー業とほぼ同じです。

副業的に節税目的で行っている場合は、コインランドリー事業と同様に2年の延長が決定した中小企業経営強化税制の対象外となり、即時償却が認められるのは令和53月までとなる見込みである点も同様です。 

近年の税制改正の傾向と対策

近年の税制改正の傾向として、令和2年度の海外不動産、令和4年度のドローンと足場リースと、短期的に減価償却費を計上し、大きな帳簿上の赤字を作ることによって節税するスキームが次々に潰されていっています。

足場リースのように10年以上前からあった節税スキームもありますが、中にはドローンやマイニングのように近年台頭し、短期間で封じられてしまったものも少なくありません。

節税のみを目的として投資を行うのではなく、その節税スキームが封じられて節税のメリットを封じられてしまったとしても事業として成り立つなど節税以外のメリットが残るものを選ぶようにすることが大切です。

今後『節税ができる』と謳う似たような節税スキームが出てきたとしても、すぐに飛びつかないよう気を付けておけば、節税効果がなくなった採算の取れないビジネスだけが残るといった最悪の事態は避けられるでしょう。 

まとめ

近年短期間で減価償却費を損金計上し、短期的な節税をするスキームが次々に封じられています。そのため、節税をうたう何らかの商品や方法をすすめられた際には、その節税スキームがどのようなものなどかを十分に理解し吟味したうえで検討することが大切で、よくわからないという人はグレーな節税には手を出さないようにした方が賢明です。

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