医師・歯科医師も他人事ではない「円安」急落の影響と理由、その対策は!?【円安ドル高①】

円の実力50年ぶりの低さ!!円の実力はピークの半分以下に!!

円の実力50年ぶり低さ 実質実効値、円安進み購買力低下: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 4月27日、日本銀行が大規模な金融緩和を継続する意向を示したことにより、東京外国為替市場で「1米ドル=130円台」に突入。

6月14日、1998年10月以来の「1米ドル=135円台」の円安水準となりました。

7月末の米国FOMCでの利上げ次第では「1ドル=140円」を突破する可能性も十分にありえます。

 そもそも「円安」とは!?円安が進むと得をする?損をする?

結論を先に言いますと「円安では損をする」「円安でマイナスの影響を受ける」ネガティブ要素が大きいです。

円安とは、外国の通貨に対して円が安くなることつまり円の価値が下がるということです。逆に円高とは、外国の通貨に対して円が高くなること円の価値が上がることを言います。

円やドル、その他の通貨は常に交換取引が行われています。

 チャートとは、為替(株式など)の過去の値動きを、価格(縦軸)や時間(横軸)としてグラフとしたもの、為替レートとは外国為替市場において異なる通貨の交換(売買)される交換比率のことを言います。

2016年~2021年末迄の直近5年間は「1米ドル=110~115円」前後で交換取引されていましたが、2022年1月から4ヵ月足らずで約135円(約25円の円安)までレートが下がり、7月中旬には約139円まで値を下げました。では円安の何が問題なのでしょう。

円の価値が下がるということは・・・これまで買えていた商品が同じ値段では買えなくなる。物を買うのにより多くのお金を払わないと買えなくなる問題が発生します。

例えば・・・

アメリカで1個1米ドルのハンバーガーがあったとします。

これを日本円で購入する場合、これまでは110円で買えていたのに、現在(2022年7月現在)にはより多くの日本円の必要(139円)となる、つまりは日本円の価値が下がったということになります。(約21%DOWN)

では具体的に円安の影響をどのような問題点があるのでしょうか。

 円安のよる個人(家計)レベルでの影響は!?

個人の家計レベルでの支出が増えることが必須です。

特に輸入に頼っている(自給率が低い)食品やエネルギー資源の購入価格の高騰は誰しもが影響を受けざるを得ないと言えます。

日本の食品自給率は37%(カロリーベース)、特に小麦(14%)や大麦(9%)などは自給率が非常に低く海外からの輸入が大半を占めます。

エネルギー資源自給率も先進国では極めて低い11.%となり、円安の影響で電気代・ガス代などの光熱費、車両維持費用のガソリン代、公共機関の交通費などの値上りの影響をすでに感じている先生方も多いのではないでしょうか。

※食品自給率(食料自給率 - WikipediaWikipedia参照

米国のインフレ退治を目的とした金融引き締めによる円安の影響に加え、先のロシアのウクライナ侵攻による「ロシア原油輸入禁止の世界的な流れ」や「世界の穀物生産量(大麦・小麦など)への不安」などの影響を受け、個人の家計レベルでの支出増加でネガティブな影響を与えることは間違いありません。

円安のよる日本経済・社会レベルでの影響は!?

日本経済・社会レベルではどのようなマイナスの影響があるのでしょうか。

円安が加速すると、原材料価格の高騰に繋がりますので企業業績の悪化原因になりかねません。

一般論で言えば、企業は業績の悪化を防ぐために原材料価格の高騰を販売価格に反映される必要がありますが、販売価格を上げることは個人消費を下げることに繋がり、やはり企業業績の悪化に繋がります。

「企業が賃上げをすれば良いのでは!?」と言う声も聞きますが利益を上げにくい状態での賃上げは難しく、仮に賃上げを行った場合でも賃上げを行ったことによる更なる物価の高騰により「悪いインフレーション」に陥る可能性が高まるのです。

 ※悪いインフレーション・・・経済成長が低い(景気が停滞局面)にも関わらず、物価だけが上がる経済状況。

日本は悪いインフレーションを経験済み・・・オイルショック

悪いインフレが起こった場合、年金受給者や所得金額が低い世帯の生活は苦しくなります。

そうなれば政府は補助金や助成金などの財政出動を余儀なくされます。

財政出動は財政赤字を招きますので財政危機への懸念が強まり、更なる円売り(円安)が加速、原材料価格が高騰してインフレが進むと言う悪循環(悪いインフレーション)に陥ってしまう可能性があるのです。

「企業が賃上げをすれば解決する!?」と言った解決手段は、年金受給者や賃上げが苦しい企業、その企業に勤務する世帯の生活を更に困窮させる可能性があり、悪いインフレーションの更なるループを引き起こし格差社会の拡大を助長すると言ったマクロ視点での問題引き起こしかねません。

また、財政赤字は将来的にいつか穴埋めをしなければならず、更なる高所得者への増税と言った先生方へのマイナス要素・懸念もございます。

円安による投資・資産形成レベルの影響は?

昨今では「米国の株価指数S&P500が好調だ!」と言う話を聞いて、NISAや積立NISAを利用してS&P500連動の投資信託を購入されている先生方も多いのではないでしょうか。

2022年のS&P500に関しては年初より下がっており、一時反発したものの再び下落し年初来▲24%を記録しています。

年初 4793.54(2022年1月4日)

安値 3650.72(2022年6月16日)▲24%DOWN

一方で以前から一般NISAや積立NISAなどの制度を利用して「投資信託」でS&P500を運用していると言う先生方の中には今年(2022年)過去最高益が出た方もいらっしゃると思います。

過去最高値 20,191(2022年4月20日)

SP500指標が右肩下がりに下落しているにも関わらず、eМAXIS Slim米国株式SP500の基準価格は4月20日時点で過去最高値を付けています。

では、なぜこのような事が起こるのでしょうか。

それはeМAXIS Slim米国株式SP500はS&P500指標を日本円換算した際の指標に連動するからです。

米国株式市場が下落しているにも関わらず、円安の影響で海外投資資産が増えている・利益が出ている=正確には為替含み益が出ていると言ったことが起きているのです。

以前から海外投資をしていた投資家や、海外資産を保有している先生方は円換算での資産が増大しているのではないでしょうか。

弊社の顧客でも、この円安の恩恵を受けて資産額が過去最高となった先生もいらっしゃいます。

ただし一方で、昨今の資産形成ブームで海外投資や資産形成をスタートした先生方は、米国株式市場の不調を受けて海外投資にご不安を覚えていらっしゃるかもしれませんね。

また、今後、米国株式に投資信託で投資を始めていきたい方々は、株価は低いにも関わらず、円安の影響で購入価格が過去最高水準となり割高購入となってします可能性もございます。

確かに今は円安傾向ですが、また為替水準が「1ドル=110円」に戻った場合は為替だけで「マイナス25%」と言った含み損を抱えてしますリスクもございます。

年収が上がっても「増えるのは税金だけ!?」円安で実質の可処分所得(使えるお金)は減ってしまう!!

 米国株式投資では円安がプラスに働くと言った意見も耳にします。

確かに昨今の円安で米国資産を以前から多く所有している方の中には資産が過去最高額となった方々も多くいらっしゃいます。

本当にそうなのでしょうか。

本質は・・・我々は「日本で生活している」ことにあります。

本記をご覧の皆さんの多くも、日本円で収入(給与・所得など)を得ており、また日本円で貯金を行っていると思います。

日本経済団体連合(経団連)の「2022年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(加重平均)では、定期昇給も含む月例賃金の引き上げ額は・・・

賃上げ額 7,430円/

賃上げ率 2.47%

と公表されました。

一方、対ドル円相場は年初来より約15%(1ドル年初115円⇒7月時点139円)下がっています。つまりは円の価値が約19%下がっていると言えます。

言い換えれば・・・

収入(給与・所得など)が上がったにも関わらず、円安の影響でその給料の価値自体が▲18%下がっていることになります。

つまり世界的に大きな目線で見れば、我々の給料は上がっているのではなく逆に2割カットになっていると言えるのです。

 

円安が追い風に!?円安時の資産形成はどうすれば良いのか!?

現実的な話として・・・

我々は日本で仕事を行い、日本で家族を持ち、日本で生活を営んでいます。円の価値が下がったからと言っておいそれと海外に生活の拠点を移すことは困難でしょう。

では何もしないで手をこまねくしかないのでしょうか!?

Q:円安になると利益を出しやすくなる企業はどのような企業でしょうか?

A:そうです!!「海外に輸出を多くする企業」や「海外売上高比率が高い企業」は円安が追い風となる可能性が高くなるのです。

例えば、先生方もご存じの「任天堂Switch」を販売しているゲームメーカー「任天堂」。

米国でも人気の「任天堂Switch」を1台300ドルで販売する場合では、

「1ドル=115円」では約34,500円で販売してことになります。

しかし円安が進んでしまい「1ドル=140円」になってしまった場合では約42,000円と円換算で売り上げが7,500円上がっていることになります。

つまりは円安を追い風として会計上業績が向上する可能性がありも十分あると言えるのです。

 実際に、「任天堂」や「トヨタ自動車」など輸出が多い企業の営業利益や純利益は上方修正となっています。

【任天堂】

2022年3月期通期連結累計期間の業績予想値

連結売上高予想 +3.1%

同純利益(米国会計基準) +14.3%と上方修正

対米ドルでの想定為替レート 105年→110円

【村田製作所】

2022年3月期通期連結累計期間の業績予想値

連結売上高予想 +2.3%

同純利益 +11.4%

【トヨタ自動車】

2022年3月期第3四半期決算

生産台数の計画は引き下げ

営業利益 増益分 4,450億円(円安が追い風となる)

想定為替レート 110円→111円

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響で世界経済は危機状況を迎え、世界各国は金融緩和を行うことで世界的な経済危機からの立て直しを図りました。

その結果、米国の「利上げ」や「量的引き締め(QT)」に引きずられる形で現在の歴史的な「円安ドル高」問題が発生しています。

ただ、これをマイナスに捉えるのではなくプラスに捉え、資産形成をスタートする機会にしてみてはいかがでしょうか。基本的な知識と持ち「長期」「分散」「積立」投資(資産形成)を行うことは、自身やご家族様のためを考えると決してマイナスではなくプラスになるのではないでしょうか。

株式会社フィナンシャルマネジメントではこれまで300人以上の医師・歯科医師(勤務医・開業医)のライフプランコンサルを行ってきた実績がございます。また無料相談も実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

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