医師・歯科医師も知っておきたい!経済は高校生レベルの知識があれば十分理解できる!?【円安ドル高②】

「円が一時、1ドル=139円台!!日米金融政策乖離で24年ぶり安値更新」

7月15日の外国為替市場で円が対ドルで下落、一時1ドル=139円台を付けた。1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準となる。

米連邦準備理事会(FRB)はインフレを抑え込むために金融引き締めに前向きな中で、日本銀行は金利を抑え込む姿勢を明確に示しており、日米金利差の拡大が意識された円売りに歯止めがかからない状態だ。

4月下旬に1ドル=130円の安値を更新して以降、各種マスメディアでは挙って円安を報道しています。

 利上げ、円安ドル高、FOMC、量的緩和、為替・・・「経済用語は響きだけで難しそう!?」「なんだか意味がよく解らない!!」と感じている先生方も多いと思います。

 為替や経済政策、金利の仕組みが理解できていないと世界経済や資産形成が理解できず時代に取り残されてしまいます。

営業担当の言いなりとなり、大きな損失を出してしまう可能性もあります。

ですが!!高校生レベルの知識さえあれば、基本的な世界経済は理解できますし、円安ドル高そのメリット・デメリットも理解できると思います。

特に理数系の医師・歯科医師の方であれば、基本的な経済を抑えることはそれほど難しくはありません。

今回は昨今の円安ドル高、そしてそれを原因とした物価上昇を解説!!今後の資産形成に活かしていただければと思います。

歴史的な「円安ドル高」の原因は新型コロナウイルス感染症!?

 2019年12月8日に新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が中華人民共和国の武漢市付近で確認されて以降、瞬く間に全世界に流行が広がり、多くの国で感染の抑制を目的とした渡航制限や外出制限などを実施されるなど、国内外に関わらず人と物の流れが制限されるようになります。

その結果、世界経済は急速に悪化し、国際通貨基金(IMF)がグレード・ロックダウン(大封鎖)と表現するほどの世界的な経済危機が発生する事となりました。

コロナ禍以降、各国の中央銀行は景気対策として金融緩和を行うことで世界的な経済危機からの立て直しを図りました。(※①)ゼロ金利政策や(※②)量的緩和(QE)

※①ゼロ金利政策・・・中央銀行から貸し出す資金(お金)の金利をゼロに近づける(低くする)政策。

※②量的緩和・・・中央銀行が市場に資金(お金)を大量に供給する政策。

その結果、世界の市場では資金(お金)が循環し、リーマンショックを超えると言われたコロナショックの不況から短期間で経済を立て直すことに成功したのです。


日本や中国を除く世界各国では、新型コロナウイルスのワクチン普及が進み経済活動が正常な状態に戻りつつあります。

物流が活発となり、市場も動き出す。コロナ禍で抑制されていた旅行やレジャーを楽しむ人たちが増えてきました。

これら経済活動にはエネルギーや原油、ガソリンが必要となってきます。

コロナ禍でエネルギーや原油の需要は停滞していましたが、経済活動が再開したことで供給が追い付かず原油価格が高騰し始めます。

更に拍車をかける形で、2022年2月24日ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカでロシアの石油や天然ガス輸入禁止が決定したことによりガソリン価格(エネルギー価格)が高騰することになったのです。

特にアメリカでは政府が日本と比べても手厚い給付金を支給、金融緩和により企業が「人(雇用)」と「物(設備投資など)」を活発に行い好循環が生まれました。

ここまでは良かったのですが・・・

新たな問題として企業の人材不足(労働者不足)=賃金の高騰(有能な人材を確保する為には好待遇で迎える必要がある)、また市場に大量の資金(お金)がばらまいたことによる物価の上昇(貨幣価値の下落)、経済活動に必要なエネルギー価格の上昇が収まりません。

その結果、アメリカの消費者物価指数(CPI)は2022年3月以降8%を超えインフレが収まらなくなってしまったのです。

日本でも政府・日本銀行が「物価の安定目標」を2%定めているように、通常であれば物価変動率は2%前後が良い経済成長率を言われています。

世界的パンデミックの経済危機対策で資金(お金)を市場にばらまいた結果、アメリカのインフレーションは現状のままであれば手の付けられないモンスターとなってしまったのです。

インフレーションの定義は「一般的な物価水準が継続的に上昇し、貨幣価値が下落すること」とあります。

安定的に長期間を有するインフレーションは経済学者からも支持されますが、急激なインフレーションや短期間でのインフレーションは消費者に打撃を与え経済の混乱を招きかねません。

そこでアメリカの中央銀行が取った政策が、金融緩和の逆・・・

金融の引き締めである(※③)金利の引き上げ(利上げ)と(※④)量的引き締め(QT)なのです。

※③利上げ・・・中央銀行が貸し出す資金(お金)の金利を引き上げる政策。

※④量的引き締め(QT) ・・・中央銀行が市場に資金(お金)を回収する政策。 

金利の上昇がもたらす影響は?金利が下がれば好景気!!金利が上がれば不景気になる!?

まず金利の引き上げ(利上げ)を説明したいと思います。

中央銀行・・・日本では日本銀行(BOJ)、米国では連邦準備制度理事会(FRB)、

ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)のことを言います。

市中銀行・・・日本で言う都市銀行(みずほ、三井住友、りそな、三菱UFJ銀行)や地方銀行(全国62行)など、一般的に「銀行と言って頭に思い浮かぶ銀行」のことを言います。

一般的な市中銀行は、中央銀行から資金(お金)を借り、それを企業や個人に貸し出すことで利息を得て利益を得ています。

コロナ禍では各国中央銀行から貸し出す資金(お金)の利息が、限りなくゼロに近い(低い)金利で貸し出す政策(ゼロ金利政策)を行っていました。

中央銀行が金利を引き上げることになると、市中銀行は多くの利息支払いをしなければいけません。

当然、市中銀行が一般の企業や個人に貸し出す金利も引き上げることになり、消費者が借りた資金(お金)に対して支払う利息も多くなります。

支払う利息が多くなるので、融資を受けてビジネス拡大に投資しようと考えていた企業や、融資を受けてマイホームを購入しようと考えていた消費者は、金利が上がることにより融資を受けづらくなります。もしくは以前より悪い条件でしか融資を受けられません。

その結果、消費が下がり市場が冷え込むと市場から資金(お金)が減少することになる、すなわちインフレが収まっていくことになります。

インフレの抑制を目的として、米国中央銀行(FRB)が意図的に行っている政策が昨今マスメディアで話題の利上げ(金利の引き上げ)となるのです。

金利の仕組みが理解できれば経済が見えてくる!?マイホームや事業借入の金利はどうやって決まるのか?

一般的に金利とは借入期間によって利率(金利)が高くなったり、低くなったりします。

親友から「100万円を貸してほしい!明日には絶対に返すから!」とお願いされた時、あなたは「信用している奴だし、まぁ明日返してくれるなら100万円いいだろう!」となったとします。

逆に「100万円貸してほしい!10年後には絶対返すから!」とお願いされた場合は「いやいや10年後!?本当に貸したお金が返ってくるのだろうか!?」と心配になると思います。

これは銀行から資金(お金)を借りる場合でも同じことが言えます。

長期間での借入をする場合は金利が高く設定されますし、短期間での借入の場合では金利が低く設定されるのが一般的です。

市中銀行はこの長短借入金利差を利用してお金を儲けている企業になります。

要は、短期(安い金利)でお金を借りて、長期間(高い金利)で貸し出して儲けるのです。

市中銀行は中央銀行から「0.1%」でお金を借りて、長期融資(事業貸付や住宅ローンなど)で「1.0%」で貸し付けを行い「0.9%」の利ザヤを利益とするのです。

では、このような低金利状況で中央銀行(FRB)が「金利を上げます!」と宣言するとどうなるのでしょうか。

急激(短期的)な「利上げ」は金融市場に大きな影響を及ぼします。

短期金利は中央銀行の政策金利の影響を受けやすくなっています。

・短期債 ⇒ 2年物国債が目安

長期金利は物価成長率や経済成長率などの将来性の見通しによって決まります。

・長期債 ⇒ 10年物国債が目安

例えば、急激な「利上げ」で短期市場の金利が2.1%まで上がった場合、市中銀行は3.0%まで金利を上げなければ同じ利益を確保することができません。ただ、長期金利は短期金利と違いすぐに金利が上がることがありません。

例)35年融資の住宅ローンは35年間金利が上がりませんが、短期間固定金利型の住宅ローン融資は固定期間終了後に金利が変更(見直し)になる。銀行からすれば変更できる。

中央銀行が「金利をあげる!」という事は・・・

市中銀行は短期金利市場で高い金利「2.1%」で資金を調達して、長期金利市場で安い金利「1.0%」で貸し出し「1.1%」の損失を出してしまうと言う異常事態となってしまうのです。この異常事態を現したサインを逆イールドと言います。

逆イールド(長短金利差の逆転)・・・2年物利回り>10年物利回り

当然、逆イードルになった場合、銀行としては資金(お金)を貸し出すことに消極的にならざるを得ません。「貸し渋り」状態となることは当然です。

資金を調達できない企業が増える、住宅ローン融資を利用できない消費者が増えることは直結した景気後退に繋がるのです。

そして、この逆イールドが2022年4月1日に発生したのです。

以降、6月14日、7月5日にも逆イードルが発生。

2007年に起こったリーマンショックの影響は皆さんもご記憶に新しいのではないでしょうか。この際にも逆イールドは発生しています。

アメリカでは1990年以降に3回の景気後退局面がありましたが、その全ての局面で2年物国債の利回りと10年物国債の利回りの「逆イールド」が発生しているのです。

超短金利差がゼロを下回る(逆転する=逆イールド)を、その1~2年後に景気後退(リセッション)する予兆を言われているのです。

利上げの影響を受けるもう一つの側面!?金利が上がればボーナスが貰える!!

Q:なぜ日本では銀行に預金しても利息が雀の涙ほどしか付かないのでしょうか?

A:そうです。「金利が低い」から=「政策金利が低い」からです。

米国の金利が上がるということは「米国で預金している資金の利息(ボーナス)がたくさんもらえる」ということになります。

日本国内の銀行預金の金利はたかだか知れています。

米国では政策金利上昇の影響もあり、普通預金で約2.5%(税引き前)の利息を得ることができます。

為替リスクがあるとは言え、日本円で日本の銀行に預金しているよりも、米国ドルで米国の銀行に預金している方がボーナスを多くもらえるのです。

米国の政策金利が上がれば(利上げ)、必然的にドルの人気が上がってドル高になります。

各企業・各個人・各投資家のその時々の資産には限りありますので、外国為替市場ではドルが少なくなって米ドル高になり、日本円を売却してボーナスのたくさん出る米ドルを購入するためドル高・・・結果、日本円の価値が下がっていき円安へなっていくのです。

まとめ

日本での金融資産構成比率は「現金と預金」が実に52.8%と世界の中でも非常に偏った構成になっていることはご存じだと思います。「保険・年金」の31.4%においても日本円に偏っていると言わざるを得ません。

先生方の2022年の歴史的「円安ドル高」を受けて、日本円だけで(日本円中心で)資産を保有する問題(リスク)を再認識したのではないでしょうか。

これははっきり言って間違いです。経済成長をしていない国に集中投資をしているようなもので、堅実や安全とはほど遠くリスクのみを取っている選択と言えます。

では円安対策、インフレ対策はどのようにすれば良いのか?

外貨資産を所有することです。外貨、外国株式、外国債券などを持つことが円安やインフレ対策をなります。

また、「現金や預金」のみに偏った資産構成や日本円のみに偏った資産形成ではなく、バランスの良いポートフォリオを組むことでリスクの分散が可能となることをご理解いただけると思います。

 

株式会社フィナンシャルマネジメントではこれまで300人以上の医師・歯科医師(勤務医・開業医)のライフプランコンサルを行ってきた実績がございます。また無料相談も実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

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