不動産投資における理想的な繰り上げ返済資金の準備方法とは?

老後の資産収入を目的として不動産投資をされている方の場合、資産収入を得たい時期までに返済を終えておく必要があります。

若い頃から不動産投資をされていて、35年ローンを組んでもリタイア前に返済が終わるのであれば繰り上げ返済計画を立てる必要性は低いのですが、なかなかそのように放っておいてもうまく行くケースばかりではなく、ほとんどの方が何らかの形で繰り上げ返済資金を用意する必要に迫られます。

ではどのように備えれば良いのでしょうか?

今回は、理想的な繰り上げ返済資金の準備方法と、それを可能にする理想的な資産ポートフォリオの考え方についてお伝えしましょう。

 繰り上げ返済資金の準備方法4選

まず、大前提として、繰り上げ返済資金を準備する方法は一通りではありません。

主な方法には、

①貯金で繰り上げ返済を行う方法

②生命保険の満期金で繰り上げ返済を行う方法

③退職金で繰り上げ返済を行う方法

④投資運用していた資金で繰り上げ返済を行う方法

などがあります。

これら4つの手法にはそれそれメリット・デメリットが存在するため、何れかを選択するという考え方ではなく、4つを組み合わせて繰り上げ返済資金の準備を行うのがお勧めです。

それぞれの手法のメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。

 ①貯金で繰り上げ返済を行う

住宅ローンを組んでいる人のほとんどが、その繰り上げ返済資金の一部を預貯金から捻出しています。この方法は最も一般的な繰り上げ返済資金の準備方法なのですが、実は最も難易度が高い方法とも言えます。その理由は、金利と流動性にあります。

皆さまご存知と通り、現在銀行に預けていてもほとんど増えませんし、今後も増えそうにありません。また、預貯金は簡単に引き出しができてしまうため、なかなか計画通りに貯められないという方も多いようです。

 ②生命保険の満期金で繰り上げ返済を行う

養老保険を活用する方法で、貯金よりも若干多い運用益が期待できること、そして半強制的に保険料を支払う必要があるため、手元にお金があると使ってしまう方などにお勧めの方法です。

ただし、昨今の超低金利な情勢下では、その運用益はほとんど期待できない上に、保険には貯金同様のインフレリスクもあります。

もし途中解約してしまった場合には、積み立てていた金額よりも少ない金額しか戻ってこない可能性もありますので、途中で解約しなくても済むような金額設定にしておくことが大切です。

 ③退職金で繰り上げ返済を行う

会社勤めの人など、退職金制度のある給与所得者の方であれば、マイホームローンを退職金で完済する計画を立てている方は多くいますが、特に開業医の方の場合は、自身で退職金を準備しない限り、退職金はありません。

医療法人の方であれば法人保険、個人事業主の方であれば、小規模企業共済や倒産防止共済の共済金を退職金原資とすることが一般的です。

これらの手法は、現役時代に一定の節税効果を得たうえで、退職金として受け取る際にも、税金の優遇があるため、加入条件等を満たす場合には必ず利用したい制度です。

 ④投資運用していた資金で繰り上げ返済資金を行う

投資をすることによって、資金を運用し、増やすことが可能です。

皆様もご承知の通り、投資にはリスクがありますが、そのリスク以上に積立投資による『複利運用』の効果が絶大なんです。

世界の金融商品の平均利回りは4~6%だと言われています。仮に毎月10万円ずつ30年間積み立てて、平均5%で運用できたとしましょう。

もし、利息がほとんどつかない定期預金(年利0.1%)に毎月10万円ずつ30年間積み立てた場合は、複利であっても3654万円(利息部分は54万円)ですが、年利5%で10万円ずつ30年間積み立てることができれば、8323万円(利息部分は4723万円)と2倍以上になります。そのくらい複利の効果が大きく、この効果を利用しない手はありません。

ただし、投資にあまり馴染みのない方がいきなりハイリスク・ハイリターンの投資を行うのはお勧めできません。そんな中で、特に投資初心者の方にお勧めできるのは、インデックスファンドの積み立て投資など堅実な投資です。

 インデックスファンドの積み立て投資とは?

日経平均株価やTOPIXNYダウなどと言った株価指標をニュースや新聞で見聞きされたことのある方も多いのではないでしょうか?そのような指数に連動して価格が変動するファンド(投資信託やETF)をインデックスファンドと言います。

インデックスファンドのメリットは、なんといってもその手数料の安さ。実は、日本国内で購入できる投資信託の中には、手数料だけで2~3%程度も取られてしまい、手数料の負担が投資効果をかき消してしまっている商品も多くあります。その点、手数料が安いインデックスファンドは、手数料の高いアクティブファンドを上回る運用実績を誇る商品も多く、積立投資に適しているのです。

よくアクティブファンドの運用実績と比較されるSP500という指数があります。

8割のファンドマネージャーの運用実績がその市場平均に負けるとも言われているため、もし迷った場合は、SP500NYダウなど今後も上昇が期待される指数をベースにしたインデックスファンドに投資してみるのがお勧めです。

 理想的な資産ポートフォリオとは?

日本人の多くは、保険や預貯金を中心に資産形成を行っていますが、富裕層のポートフォリオを見ると、人や国によってそのバランスや傾向は違いますが、株式系資産(投資信託、ETFなどを含む)、不動産系資産、現金系資産(保険を含む)の3種類全部が入っていることがほとんどです。

『どのようなバランスで資産を形成するのが理想的なのでしょうか?』

『お勧めは、資産の2割を現金(保険を含む)として保有し、それ以外の部分で、不動産やインデックスファンドなどローリスク~ミドルリスクの運用をする方法です。』

まず、不動産は実物資産であるためインフレに強い特徴を持ち、相続で有利であるなど、富裕層が必ずそのポートフォリオに不動産を組み込んでいるのには様々な理由があるのですが、医師・歯科医師が不動産投資を行う場合、レバレッジを利かせられるというメリットも忘れてはいけません。(レバレッジとは、てこの原理を意味し、融資など他人資本を活用し、より大きな資金を運用することを意味しますが、株式投資やFXなどでいうレバレッジと不動産投資でいうレバレッジの意味は異なります。)

医師・歯科医師が投資用の不動産を購入する場合、銀行で借入を行うのが一般的です。

例えば40歳の時に1億円相当の不動産を35年のフルローン(年利2%程度)で購入すると、65歳時点で4000万円弱の残債が残っている計算になりますが、25年間かけて減った6000万円借入金のほとんどがオーナーの財布からではなく、入居者の財布から支払われたものです。このように、他人資本を活用して投資をすることでより大きな資産を築くことが容易になるのです。

それに加えて、積立投資を行って、その繰り上げ返済資金を準備すると、より効率的な資産形成が可能になります。

例えば、月々10万円ずつ40歳から25年間インデックスファンドの積立投資を行って、年利3%を実現できれば、4460万円の株式系資産が築けます。そうすると、小規模企業共済や確定拠出型年金、保険の満期金など他の資産に手を付けることなく、先述の1億円相当の不動産の繰り上げ返済を行うことも十分に可能です。先述の通り、世界の金融商品の平均利回りは4~6%であるため、年利3%は決して夢のような数字ではありませんし、年利4%(同条件で5141万円に)、年利5%(同条件で5955万円に)、年利6%(同条件で6930万円に)も十分実現可能な数字です。

 まずは収入の1割を投資に回そう

収入の2~3割を貯金すべきなどと言われていますが、収入の1割でも貯金ではなく投資に回すようにすることで、複利とレバレッジの効果でより大きな資産を築ける可能性が高まります。投資に対して危険なイメージを抱いている方も少なくはないと思いますが、残念ながら銀行に預けているだけでお金が増えることは恐らく今後も期待できそうにありません。まずは、収入の1割程度でリスクが低めの投資を始めてみることをお勧めします。

おすすめの記事