不動産投資に個人開業医の年金不足を解消する効果はあるのか?

老後資金が2000万円不足すると言われ始めて早数年が経ちましたが、個人開業医の方々の中にも

老後資金が足りていなさそうなので不安

リタイアできるのかな?

といった悩みをお持ちの方の多いようです。

今回は、リタイア後の不労収入を目的として検討されることの多い投資用不動産について、本当に老後の資金不足解消に役立つのか?どのようなメリットやデメリットがあるのか?など深堀していきましょう!

 個人開業医の年金問題はかなり深刻です!

そもそも、先述の2000万円という数字は一般的な会社員家庭におけるものです。

その基になった数値は以下の通りです。

収入:209198

支出:263718

毎月約5.5万円の不足が30年続くと約2000万円足りなくなるといった計算だったのです。

あなたの家計と比較してみて、支出が少ないと感じた方も多いのではないでしょうか?

個人開業医の場合は、現役時代の収入が高い分、支出も多くなっている傾向にあります。

一方で、厚生年金や共済年金に加入していた期間が非常に短いことが多いため、もっと年金収入が少なくなるケースがほとんどかと思います。

生活レベルを落とすのは非常に困難で、老後も現役時代の6~7割程度の生活費がかかると言われています。

また、個人開業医の場合、退職金も小規模企業共済やiDeCo、セーフティー共済などを活用して自分で準備しておくしかありません。

医療法人の役員の方のように法人保険で節税と特殊スキームの同時活用を行いながら退職金を準備することもできず、十分な退職金を受け取れないため、長く働くことを選択されることも多いようです。

このように備えが少ない分、もし、時期が来たらリタイアして残りの人生を謳歌したいとお考えの方は、会社員世帯以上にそのための準備が必須となるのです。

 個人開業医の老後資金はいくら足りないのか?

では個人開業医の老後資金はいくら足りないのでしょうか?

A先生の事例を基にご説明しましょう!

個人開業医A先生プロフィール

個人開業医(40歳)

配偶者(40歳):専従者

世帯年収2,500万円(専従者給与480万円)

現在の生活費:月100万円(学費と事業関連支出を除く)

預貯金:800万円

国民年金のみ

小規模企業共済(月7万円)とiDeCo(月6.8万円)に35歳時点から夫婦で加入している

65歳でリタイアを希望

厚生年金・共済年金等の加入歴は4年間

この条件を基に計算してみると、

年金収入:13万円(2人分)

退職金:8700万円(2人分・税引き後)

60歳時点でiDeCo(6.8万円×12ヶ月×25年=2040万円)65歳時点で小規模企業共済(7万円×12ヶ月×30年=2520万円)受け取り

その他金融資産(預貯金等):1500万円(仮)

A家が65歳までに準備できている老後資金です。

 

一方で、支出を現在の70%と仮定すると、月70万円。

月々の収支は▲57万円となり、1億円以上老後資金が準備できていても、約15年でその資金が枯渇する計算になります。

老後を30年と仮定すると約1.5億円も足りないのです。

老後資金が2000万円不足すると言われていた会社員家計の約10倍も月々の収支がマイナスとなっているため、当然減るスピードも速いんですね!

老後資金を準備する方法4

足りない老後資金を準備する方法には主に以下の4つの方法があります。

  • 公的制度を活用する
  • 保険を活用する
  • 家賃収入を得る
  • 配当収入を得る

それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう!

①公的制度を活用する方法

個人開業医でも活用できる制度には、小規模企業共済、倒産防止共済、iDeCoNISAなどがあります。

どれも他の手法に比べるとリスクが低いものが多いため、活用されている方が多いのではないでしょうか?しかし、それぞれの制度に限度額が存在するため、フル活用してもまだ老後資金が不足していることも少なくありません。

②保険を活用する方法

年金保険や養老保険を用いて老後資金を準備されている方も多くいらっしゃいます。

保険を活用する大きなメリットは、確実性でしょう。たとえば、10年確定給付の年金保険に加入すると、途中で辞めない限りほぼ確実に10年間決まった保険料が入ってきます。

一方デメリットに、保険はインフレリスクに弱いという点が挙げられます。また、日本国内での生命保険積立は長期国債運用が前提あるため、運用利回りが他商品に比べると非常に低いのも特徴です。

例えば、先ほどの10年確定給付の年金保険に加入すると、その保険金額が月30万円なら、30万円ずつ10年間受け取れるのですが、その30万円の価値が大きく変わっていたとしても受け取れる金額は30万円のままなのです。

また、現在加入できる保険の運用効果はあまり期待できないものが多いことから、例えば1000万円の満期金を受け取るためには、トータルで1000万円近く支払っておく必要があることも全て保険で準備することが難しい原因の1つと考えられます。

③家賃収入を得る方法

投資用不動産を持つことによって得られる家賃収入を年金代わりにする方法で、ある程度の信用力がないとローンを組むことが難しいため、比較的金融機関からの評価が高い個人開業医に向いている手法と言えます。

そのメリットは、保険等と比べて月々の手出しが少なくても済むこと、実物投資であるため、株のように短期間での相場の値動きが少ないこと、長期的な不労所得が期待できることなどが挙げられます。

一方でデメリットは、投資であるため、一定のリスクを伴うという点です。空室時には家賃が入ってきませんし、修繕等で臨時出費を伴うこともあります。そうなった場合でも不動産投資が事業と成り立つように事前の計画が大切です。

④配当収入を得る方法

株式や投資信託から配当収入を得る方法です。

この手法は先述の3つよりも値動きが大きく、短期間で資産がプラスになる場合もあれば、短期間で10%以上損失が出てしますこともあります。

長期的な資産形成を前提に目先の資産増減を気にされない方に向いているのではないでしょうか。

長期投資、ドルコスト平均法、分散投資を行うことで運用リスクと減らしリターンを得ることが可能な方法と言えるでしょう。

堅実な選択をするなら、S&P500など主要指数に基づくインデックスファンドに毎月決まった額を投じるのがお勧めです。月数万円程度の投資から始めてみたり、先述のNISAiDeCoを活用してみたりするのも良いでしょう。

一方で、定期的なリバランスに手間や関与度がかかること、運用をスタートする上で最低限必要な知識が他の商品を比べると多く、複雑な点がこの手法のデメリットと言えるでしょう。

これら4つの手法それぞれにメリット・デメリットがあり、どれか1つだけ行うのではなく、組み合わせて行うことがお勧めです。

皆様からよくわからないというお声の多い投資用不動産を用いた手法を深彫りしてみましょう。

 投資用不動産を用いて私的年金を準備するメリット・デメリット

不動産投資には一般的に以下のようなメリット・デメリットがあります。

≪メリット≫

☑長期的に安定した不労収入が期待できる
☑団体信用生命保険が保険代わりになる
☑インフレ対策になる
☑節税効果がある
☑融資を活用できる

≪デメリット≫

☑空室リスクや家賃滞納のリスクがある
☑金利上昇リスクを伴う
☑天災リスクがある
☑経年劣化に伴う価値の減少
☑流動性が低い

不動産投資が個人開業医の私的年金作りに適している理由

そのようなメリット・デメリットのある不動産投資が個人開業医の私的年金作りに向いているのには以下のような理由が挙げられます

☑不動産(特にマンション)は長期的な家賃収入が見込め、それが年金代わりになる
☑特に若い方は時間的なメリットを生かして、返済していくことが可能

→入居者が支払う家賃でローンを返すことができるため

☑管理を任せられるものが多く、手間を最小限に抑えられる

→忙しい開業医も方でも本業に支障をきたしません。

☑信用が高いため好条件で融資を受けやすい
☑保険に多く入っている人なら、保障を残して保険料を削減することも可能

→開業医には必須も休業補償代わりにもなる

→削減した保険料を運用することで効率的な資産形成ができる

☑節税効果も期待できる

→高所得の開業医にはうれしいメリット

☑相続税対策になる

 個人開業医の方にとっては、融資を活用することで、少ない手出しで、大きな保障と将来的の安定した家賃収入が得られる点が大きなメリットと言えます。また、管理も任せることができるため、本業への支障が出にくいのもメリットと言えるでしょう。

 個人開業医が不動産投資を行う上で知っておきたい注意点

以上のように、個人開業医に向いている不動産投資ですが、不動産投資を始める前に知っておいていただきたい注意点が存在しています。不動産投資を始めてみようかなと思った時や、不動産投資の勧誘を受けた際には、次の3点を忘れないようにしてください。

出口戦略を立てる

売却するならいつ頃か?どのように繰り上げ返済を行うのか?などスタート時に20年、30年後の予測、シミュレーションを行っておくことが大切です。

残念ながら売ったら売りっぱなしの業者や、数字を良く見せるために空室率の予想を甘くしたり、修繕費等の負担を加味していない提案書を作成したりする業者もいると聞きます。

本当にその通りになりそうか判断できる目を養いましょう。

迷った際には第三者のアドバイスも有効です。

結局本業が一番高利回りである

医師・歯科医師の皆様の場合、投資の利回りが本業を超えることはまず考えられません。

ご自身が本業に専念し、本業でより大きな利益を生み出せるよう、投資はある程度放っておいても大丈夫なものを選ぶと良いでしょう。

節税効果は限定的

最後に、いまだに不動産で節税できます!とうたう業者は多くいますが、その節税効果は限定的です。初年度は諸費用等の負担もあるため100万円以上税金が還付されることもよくありますが、それがずっと続くような説明は誇大なセールストークです。節税効果はおまけ程度に考えておくのが良いでしょう。

 

まとめ:不動産投資を始める前に

今回お伝えしたように、不動産投資は、個人開業医の方々の不足する老後資金を補うための一手となりうるものです。しかし、不動産投資は投資ですので、一定のリスクを伴います。

また、開業医の方に共通する失敗事例も存在しています。先輩と同じ失敗を繰り返さないように、先輩の失敗から学んでおくことは非常に大切です。

この記事を読んだだけでは、不動産投資がご自身に向いているのか?必要なものなのか?本当に大丈夫なのか?判断できないという方も多いでしょう。

投資をするかしないかの問題以前に、老後資金の不足を考える上でも、ご自身のライフプランやマネープランをしっかりと立てて、理想と現実にどの程度のギャップがあるのかをしり、行動することが大切です。そして、不動産投資だけではなく、公的制度や保険など他の方法と組み合わせて考えることで、より着実にギャップを埋めていくことができるのです。

株式会社フィナンシャルマネジメントでは医師・歯科医師専門のライフプランコンサルを行っております。無料相談も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

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